建設業許可なしでも受注できる業務って何?【許可不要の業務について解説】
福島県の行政書士、佐藤勇太です。
私たち行政書士は建設業許可の申請をお手伝いする立場ではありますが、建設業許可を必要としない業務も世の中には存在します。
①建設業法上の「建設工事」に該当しない業務
②軽微な建設工事
③付帯工事
この3つに当たる場合は、必ずしも(その業種の)建設業許可が必要になるわけではありません。
逆に言いますと、この3つ以外の工事を行おうとする場合には、必ず建設業許可が必要となりますので注意が必要です。
「ウチの会社のやっていることは本当に許可が要らないのだろうか?」
「ウチの会社はこのまま無許可で事業を続けていいのだろうか?」
といったような悩みをもっている方も数多くいらっしゃるかと思います。
そんな方々のためにこの記事を書きました。
最後までお読みになっていただければ、きっとお役に立てると思います。
「建設工事」に該当しない業務について
建設業法の規制は、請負契約によって「建設工事」を行う場合に適用されます。
建設業に関わる業務の中には、建設業法の規制が適用されない業務もあり、それらの業務を行う場合には建設業許可は不要になります。
具体的にどのような業務がこれにあたるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
「建設工事」とは何か?
一般に、建設工事とは「工作物の新築、改築、及び除去」を指すものとされています。
土地の工作物や建物などを新しく作ったり、作り直したり、取り除いたりする(解体も含む)作業が「建設工事」だと言えるでしょう。
これに該当しない業務は建設業法上の「建設工事」ではないので、建設業の規制がかからず、建設業許可も不要となります。
建設業法上の「建設工事」とは、”土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるもの(建設業法第2条)”を言います。
具体的な建設工事の種類は以下の通りになります。
土木一式工事 | 建設一式工事 | 大工工事 | 左官工事 | とび・土工・コンクリート工事 |
石工事 | 屋根工事 | 電気工事 | 管工事 | タイル・レンガ・ブロック工事 |
鋼構造物工事 | 鉄筋工事 | 舗装工事 | しゅんせつ工事 | 板金工事 |
ガラス工事 | 塗装工事 | 防水工事 | 内装仕上工事 | 機械器具設置工事 |
熱絶縁工事 | 電気通信工事 | 造園工事 | さく井工事 | 建具工事 |
水道設備工事 | 消防設備工事 | 清掃施設工事 | 解体工事 |
また、建設業法は「建設工事を請け負う者」に適用される法律ですので、仕事の完成を目的とする請負契約以外の業務については適用されません。
建設業法が適用されない業務
よって、以下のような業務は「建設工事」には当たりません。
- 保守点検、維持管理
- 除草、草刈、伐採
- 除雪、融雪剤散布
- 測量、墨出し、地質調査
- 樹木の剪定、庭木の管理
- 造林、採石
- 調査目的のボーリング
- 造船、機械器具製造・修理
- 宅地建物取引、建売住宅の販売
- 浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃
- コンサルタント、設計
- 資材の販売、機械・資材の運搬
- 保守・点検・管理業務等の委託業務
- 人工出し
- 自社建物の建設
(茨城県 建設業許可の手引き より)
これらの業務は、他の法律による制限を別とすれば、建設業許可なしでも行うことができる業務になります。
例えば、エアコン設備を設置する業務は「建設工事(管工事)」に該当するため、一定金額以上の工事を行うには許可が必要ですが、単なる修繕に関しては許可なしでも行うことができます。
「軽微な工事」について
建設業を営もうとする者は、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければなりませんが、「軽微な建設工事」のみを請け負うことを営業とするものはこの限りではありません。
(建設業法第3条1項)
それでは、「軽微な建設工事」とはどのような工事を指すのでしょうか。
過去の相談事例の中に、建築一式工事での木造住宅工事の場合にどこまでが無許可でできるのかというものがありました。
理解がしづらい箇所だと思いますので、かみ砕いて説明したいと思います。
”法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が建築一式工事にあつては千五百万円に満たない工事又は延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅工事、建築一式工事以外の建設工事にあつては五百万円に満たない工事とする。”
(建設業法施行令第1条の2)
建築一式工事以外の建設工事の場合、請負金額が税込で500万円未満である場合、建設業許可がなくても請負契約を締結できることは見てとれると思います。
問題の建築一式工事での木造住宅工事ですが、請負金額が税込1500万円未満であればOK、延べ面積が150㎡未満でもOKとなります。
更に説明を加えれば、1500万円未満であれば、延べ面積が150㎡以上になっても許可なしでも可能であり、延べ面積が150㎡未満であれば、請負金額が1500万円以上になっても可能だということです。
”前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。”
もしかしたら、契約を2つに分ければ500万円(1500万円)以上の工事は可能になるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、これは原則としてできません。
分割して契約した場合でも正当な理由がない限り、その2つの工事は1つの工事とみなされるのです。
また、注文者が材料を負担した場合、その材料費(その市場価格又は市場価格及び運送賃)は請負金額の中に含まれることになりますので注意が必要です。
「付帯工事」について
付帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要な他の従たる建設工事や、主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事で、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいいます。
例を挙げれば次のようなケースになります。
工事の内容 | 主たる工事 | 付帯工事 |
---|---|---|
室内の電気配線の修繕工事をするために行う壁はがし・床貼り工事 | 電気工事 | 内装仕上工事 |
建物の外壁塗装工事をするために行う足場工事 | 塗装工事 | とび・土工・コンクリート工事 |
駐車場の舗装工事をするために行う造成工事 | 舗装工事 | とび・土工・コンクリート工事 |
このような工事を行う場合、主たる工事の業種において建設業許可があれば、付帯工事については、金額にかかわらず許可なしで行うことができます。
ただし、付帯工事の金額が主たる工事の金額を上回ることは原則としてありません。
おわりに
3つの視点から、建設業許可なしでもできる業務について説明してきました。
これらの範囲を超えて「建設工事」を受注した場合、建設業法違反となり、業務停止等の罰則が科されることもあります。
昨今はコンプライアンス(法令遵守)が強調され、法令違反に対する社会の目も厳しくなっている状況にあります。
公共工事を受注する際はもちろん、民間工事の場合でも、下請業者に許可取得を求める元請業者も多くなっているようです。
また、業務を拡大しようとするとき、建設業許可がなければそれが足かせとなってしまいます。
「ウチはこれまで許可なしでも十分やってこれた」という事業者の方も、許可の取得を考えてみてはいかがでしょうか。
アゴラ行政書士事務所では、新規に建設業許可を取得しようとしている事業者様をサポートしております。
福島市・二本松市・本宮市・大玉村・郡山市の事業者の皆様については、無料にて出張相談対応中です。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
なお、新規での建設業許可申請手続の料金は次の通りです。
報酬額(税別) | 証紙代(申請手数料) |
110,000円~ + 証明書発行料 | 9万円 |
※報酬額は初回の相談後に見積額を提示いたします。
※資料不足等により申請に至らなかった場合や、許可が得られなかった場合には全額返金いたします。